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​ここではメルヘンヴェールというゲームの中で語られるストーリーをまとめています。本編は難しくてストーリーが見られないという方や、ストーリーを忘れちゃったという方の役に立つかも・・・?基本的にそのまま記入していますが、読みやすくするため漢字もいれています。また、誤字があった場合修正しています。読み物としても楽しめるかもなので、よかったらどうぞ!

SCENE1 目覚め

砂を含んだ風に、王子が目覚めると、そこは見たこともない荒れ果てた世界だった。

「ここは・・?」

起き上がろうとした王子は、自分の姿が何か、異様なものに変わっていることに気がついた。しかも身につけているものは姫にもらった、魔法の腕輪アルミラだけ。

「なにもかも、ここへ飛ばされた時なくしてしまったらしい。だがこのアルミラさえあれば、どんな姿をしていようとも、姫は私に気がついてくれるはずだ。帰ろう姫のもとへ」

・・・と そのとき、

風に吹き上げられた砂の中から、王子の剣アキナケスが現れた。

「あっ!あれはわたしの・・・

この剣さえあれば恐れるものは、なにもない」

王子はアキナケスを手に取ると、西へ向かってあるき出した。

SCENE2 ギアス

「太陽の神フェーブスよ、私はフェリクスの王子です。フェリクスへ帰るための道を教えてもらうため、あなたを訪ねてきました。」

「王子とな。お前、人間ではないのか?」

「・・・気がついたときには、このような姿となって、砂漠にいたのです。けれど私はどうしてもフェリクスに帰りたい。」

「だが王子とやら、わしは、お前をフェリクスに返すすべを知らぬ。海の神ネプトゥーヌスを尋ねるが良い」

「海の神?どうすれば会えるのですか?」

「この地の南に住む、女神ディーバがお前を導くだろう。だが、云うておくぞ。ディーバと会うためには、恐ろしい、岩山を越えねばならぬ。岩山の入り口には、千年の長きに渡り魔獣が住み着いており、わしとしても入ることは、難いしのだ。」

「その魔獣を倒せばよいと?」

「お前に倒せるであろうか。よいか王子とやら、命を無駄にするでないぞ」

「ありがとう、フェーブスよ」

SCENE3 霧のむこう

「ありがとう、ヴェール。あなたがギアスを倒してくださったので、私達も再び自由に空を舞うことができます。心から礼を言います。」

「・・・ヴェール?なぜあなたは私にヴェールと?」

「なぜ・・・?あなたはヴェール族のお方では、ないのですか?」

「私はフェリクスの王子。女神ディーバを訪ねていくところだが・・。精霊よ教えては、もらえないだろうか?ディーバはこの山のどこに?

「ディーバ様がどこにおられるのか、それは私達のだれも知らないのです。あの女神様は、人目を忍んでお暮らしになっていて、その門さえも、霧に包まれているとか。ただ、あるものを持っている方にのみ、門もその姿を表し中に入ることを許されるそうです」

「そのあるものとは」

「さあ、それ以上のことは何も」

「・・自分で探すよりない、というわけか」

「どうか、お気をつけて」

SCENE4 試練

「私はフェリクスの王子だ。ディーバにあわせてほしい」

「何をたわけたことを!お前のどこが王子に見えるさっさと帰れ!」

「先程から騒がしいようですねどうかしましたか」

「あっ、ディーバ様。申し訳ありません。じつは、この魔物が・・・」

「私は魔物ではない!ディーバよ、私の話を聞いてほしい」

「そなた・・・ヴェール?」

「ヴェール・・・?いや、私はフェリクスの王子だ。気がついたときにはこのような姿となって砂漠に倒れていたのだ。何がおきたのか、私にもわからない」

「誰がそのような嘘を信じますか」

「嘘などではない!私の話を・・・」

「そなたが真の王子ならば誇り高きフェリクスの王族の証を見せなさい。この岩山に住むアンシリー・コートという魔物たちを、そなた一人の力で倒すことができますか」

「私は王子だ。やりとげてみせる!」

SCENE5 海へ

「ディーバよ、私の話を・・・」

「その前に・・・。そなたヴェール族を知っていますか」

「ヴェール?またその名前だ。砂漠で出会った精霊たちも、私をヴェールと呼んでいた。ディーバよあなたも初めに私を見たときにそう言われた。だが、私には、なんのことかわからない」

「フェリクスに古くから伝わるヴェール伝説を聞いたことがあるでしょう?」

「それが、私とどんな・・・」

「よいですか。私は長い間フェリクスに暮らしました。ヴェールの一族にも出会ったことがあります。そなたは・・・、そなたは彼らと同じ姿をしている。それが何を意味するか、わかりますね」

「・・・」

「ここは、フェリクスの外。秩序などなにもない荒れ果てた世界です。私は、誰にも煩わされたくはなかった。それでフェリクスを出て、ここに移り住みました。ここはそなたが・・・、ヴェールがいてはならないところです。フェリクスの外にいるヴェールたちは、全て罪を犯したものとされるのですよ」

「罪?だが私は自分からここに来たわけではない。気がついたときにはもう・・・。ディーバよ、私はフェリクスに帰りたい。海の神ネプトゥーヌスならば、フェリクスへの道を知っているはずだ。ネプトゥーヌスに会う方法を教えてほしい」

「ネプトゥーヌスには、南の彼方、海の果ての迷宮に行けば会えるはず。ただ、海を渡るには、ある薬が必要です。最も、そなたにとって、それを手に入れることは、そう難しくはないでしょう。」

「ありがとうディーバよ」

「お待ちなさいヴェールよ。海へ行ったなら仙人ヤン・トモリをおたずねなさい。彼の知恵は、必ずや、そなたの力となるでしょうから」

SCENE6 氷の世界

「ん?誰かと思ったらヴェールか。私に何のようだい?」

「私は、フェリクスの王子だ。気がついたら、このような姿になって砂漠に倒れていた。私の身に何が起こったのか、それすらも分からなかったが、ただフェリクスに帰りたい一心で、ここまで旅をしてきた。

「信じられる話じゃないな」

「ヤン・トモリよ、私の話を聞いてほしい。・・・愛が結ばれぬままに死んだ者たちが、ヴェールとなって、蘇る・・・ということは、私も知っている。おそらく私は、魔法使いの手にかかって、命を落としたのだろう」

「だが、それならなぜここにいる。君が本当にフェリクスの王子ならばフェリクスに蘇ったはずだろう?」

「それは私にも・・・。だが、私は嘘はついていない。フェリクスでは、森の国の王女が私を待っているはずだ。海の神ネプトゥーヌスならばフェリクスへの道を知っていると、教えられて、訪ねていくところなのだが、あなたに会うようにとディーバに言われ、ここに来たのだ。

「君の話が本当だとしても、君はもう、王子じゃない。ヴェールだ。それをフェリクスに帰るなどとは、無理だ」

「なぜ?ヴェールとなった今でも、フェリクスに帰ることは、できるはずだ」

「君の知らないことがある。だが、海の神に会いに行くというのならそれもいいだろう。海の神はヴェールをひどく嫌っているがね」

「ヴェールを嫌っている?」

「そう、ヴェールにはフェリクスにおける使命がある。それなのに、フェリクスの外にいるとしたら、それは罪を犯したヴェール、フェリクスから逃げ出したヴェール、ということになる。海の神はそういうヴェールを捕まえなくてはならない使命があるのだ。だから、海の神にヴェールが会うというのは・・・」

「どんなに、危険でも、私はフェリクスに帰る道を選ぶ」

「そんなに言うなら、一つ知恵を授けよう。海の神の娘が、氷山に閉じ込められ、海の神は、ひどく嘆いているという。その娘を助けることはできれば、ひょっとして・・・」

「氷山から?どうやって?」

​「薬があればね。来る途中で君は、手に入れているかもしれないが・・・ああ、そうだ、もし君が浜辺でリバティオーという酒を見つけているのなら、それをディーバに持っていってやるといい。ディーバのところから、盗まれた酒だ。きっと、喜ぶだろう」

SCENE7 王子の証

「ありがとう、ヴェール。あなたのおかげで私は、父のもとに帰ることができます

「海の神ネプトゥーヌスの娘よ。私はフェリクスの王子だ。気づいたときには、ヴェールの一族となって、海の向こうの砂漠にいたのだが・・・。フェリクスに帰りたい一心で、ここまで旅をしてきた。あなたの父上がフェリクスへの道を知っていると、教えられ訪ねていくところなのだが、父上はヴェールの一族を嫌っていると聞き・・・」

「フェリクスから、逃げ出したヴェールを・・・ですわ。ヴェール族みんながというわけではないのです。あなたがフェリクスから逃げてきたのではないのなら、父を恐れることはないでしょう。ただ・・・」

「ただ?」

「あなたはご自分をフェリクスの王子とおっしゃいましたが、父を納得させるには、なにかその証となるものが・・・」

「証・・・私はこちらの世界に飛ばされたときに何もかもなくしてしまったのだ」

「・・・ああ、そういえば、地底の王が・・・」

「なにか?」

「この南に早い流れの海域があります。それを超えたところに、地底国への入口があるのですがそこを支配する王が、フェリクスの王家の、紋章をつけたケープを身にまとっていたような気がします」

「それが私のなくしたケープかもしれないと?」

「おそらく・・。ヴェール、地底の王に、会いに行くのですか?」

「会って、確かめたい。もしそれが、私のものならば、取り返さなくては」

SCENE8 終章

「ヴェールがわしに何のようだ」

「地底の王よ、あなたのまとっているそのケープは、まぎれもなく、私が父王から送られたもの。あなたがそれをどうやって、手に入れたのかは、わからないが、私に返してほしい。海の神ネプトゥーヌスに会うために、フェリクスの王子という証が必要なのだ」

「ふん、こざかしいチビめ。私は欲しいものは、何でも手に入れる。そして一度手に入れた物は、離さん。このケープはわしのものだ」

「返す気はないと、言われるのか」

「当たり前だ」

「ならばちからずくでも!」

「まあ、そういきがるな。いいかチビお前がこのケープを着ていたとしても、あのネプトゥーヌスめはお前のために扉を開けようなどとは、これっぽっちも思わんだろうよ。妙に神経質だからな、お前らヴェールに対しては。だからまあ、悪いことは言わん。ネプトゥーヌスに会うのは、諦めろ。どのみちケープだけじゃ無理だ。王子なら王冠だのなんどのと、いるだろう。第一お前が王子かどうかさえ怪しいものだ」

「もし私が、王冠を持っていたとしたら?」

「ふん、どっちにしろムダなことだ。ネプトゥーヌスに会おうと思っているのなら、酒でも貢がなきゃな。どのみち会うことなどできないのだから、ケープのことなどは、忘れてしまえ」

「そんな勝手な話があるものか」

「ええい、うるさいチビめ、こうしてくれる」

地底の王は、剣を抜くと、王子に一刀をあびせようとした。しかし、王子の剣の魔力の前には無力であった。王子は、意識を失って倒れている王の体からケープをはぐと、再び海へと帰っていった。

SCENE9 新たなる旅

「海の神ネプトゥーヌスよ。私はあなたに会うために、長い旅をしてきた。それも・・・」

「フェリクスへの道を私に問うためにか、王子よ」

「なぜそれを」

「わしは何もかも知っておる。だがお前がここまでたどりつくとはのう・・。王子よ、こちらへ」

「王子よ、これは時の水だ。わしはお前がわしの娘を助けてくれたと知った時、時の女神に頼んで、お前の過去を教えてもらった。」

「なぜそのようなことを?」

「わしは掟により、フェリクスより逃げ出すヴェールを捕らえ、罰さなければならぬ。わしにとって娘を助けてくれたのは恩人だ。が、それがフェリクスから逃げてきたヴェールとなれば話は、別。情けをかけることは許されぬ」

「それで、私の過去を・・・」

「お前は魔法使いの手で殺されたのだ。だが、魔法使いは、お前がヴェールとなって蘇るということを知っていた。そこでさらに呪いをかけて、お前をフェリクスの外へと、飛ばしたのだ。そうすればお前がフェリクスに戻れるはずがないと、思ったのだろう。あるいは、わしの手によって罰を受け、永久にフェリクスに帰ることはないと思ったのかもしれない」

「海の神よ、一つ聞きたい」

「なんだ」

「なぜフェリクスを出たヴェールは罰を受けねばならないのだ?」

「王子よ、女神ルアの名を聞いたことがあるか」

「・・・いや」

「ルアはフェリクスにあって、戦場で流された、血を償う女神だ。そしてヴェール族というのは、ルアのために存在する一族。もしヴェールがルアと、そして戦場で傷ついた者たちのために尽くすならば、いつの日かヴェールは、再び、人間となることができるのだ。」

「というと、私はこのままでは、人間に戻れないと?」

「それだけではない。ヴェールの一族には、厳しい掟がある。よいかヴェールよ、お前たちは、たとえどのようなときでも、他のものに血を流させてはならぬのだ。この掟を犯したヴェールは永遠に、人間には、戻れぬ」

「・・私は・・」

「お前が旅を続けるためにどれだけ多くのものを傷つけ、あるいは殺したかをわしも知っている。」

「私は、もう永遠に、人間に戻れぬのか」

​「・・・この海を渡れば、そこはフェリクス。お前は、フェリクスではルアの目を逃れることはできぬ。永遠にルアのために、働かねばならぬ。ヴェールには、自由が無いのだ」

「・・・」

「それでもフェリクスに戻り己の罪を償うのならば、いつの日か、人間になれるやもしれぬが・・・」

「・・・」

「だがヴェールよ。お前はわしにとって、恩人でもある。もし、お前がフェリクスに帰らぬというのなら、ここに・・・」

「・・・」

「フェリクスでお前を待っているのは果てしなくつらい、償いの日々・・・どちらを選ぶのも、お前次第・・・」

「私は、いったい何のために、ここまできたのか!自分の、呪わしい運命を知るために?ちがう!私はフェリクスに帰りたかったのだ。愛する人の待つ、フェリクスへ・・・」

「ヴェールよ、時は、取り戻せぬ。もう昔には、帰れぬぞ」

「私にはもう、失うものなど何もない。ネプトゥーヌスよ、私は行くこの先どのような運命が、私を待っていようとも」

​ 

第一部 完

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SCENE10

新月の夜、フェリクスの神々はルアの神殿に集まっていた。

「・・・というわけで、私はこのヴェールに対する裁きをお願いしたいのです。」

ルアの声が、神殿に低く響き渡った。フェリクスの天上界で平和な毎日を送り、下界の事に興味を持たない神々にとって、湖の国の王子のみに何が起こったのかを知る由は無かった。

「このヴェールは、ルア殿に仕えねばならぬ身でありながら、フェリクスを抜け出し、外の世界で罪を犯したのでしょう。永遠の罪こそふさわしいわ。」

「わしもそう思う。だが、なにゆえ再びフェリクスへ戻ってきたのかのう。おのれの罪を知らぬものでもあるまい。」

「そこがヴェールの浅はかなところよ。全く、人間ほどの知恵ももっとらん。」

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